初恋の頃
初恋のひとの夢を見た。久々に見た。
二夜連続で。
初日の朝は、目覚めたあと、おふとんのなかでしばらくほややんとしたりして、われながら乙女っぽい反応をしたけれど、さすがにふつかめの朝は、ちょっとねえ、うーん。もしや御身になにごとかあって夢枕に立たれているのでは、と勘繰った。
そういう大事のとき、訴えかけるあいてに選んでもらえるような間柄ではなかったわけですが。残念ながら。
さいごに会ったのはもう十年もまえで、それからしばらくしてきゅうに引っ越したきり、ふっつりと消息の途絶えたひとだ。だれに聞いても行き先をしらない。
なのに夢のなかではちゃんと十年ぶん年をとっていた。
もしかしてなにか事件事故のニュースのなまえがあがっていたりして、とGoogleでフルネームを検索したら、検索結果の1件め、その1件だけひっかかった。
職業と年代からいって、ほぼ確実に本人なの。遠い街にある、現在の職場までわかってしまったの。
えー。そんな、あっさり。私の十年は。
いえ、もちろん、いまさら、私も分別のあるおとなだし、連絡をとろうなんて思わない。でもGoogleってこわい装置だ。うっかり魔が差しそうになる……かといえば、そこまで強いちからはないのだけれど。
なにかの深遠を淵から覗きこんだら、うしろから背中を押そうとする気配を感じたような。
押されるような背中を自分が持っていたのだなあと気づかされたみたいな心持ちがした。
三日目の夜は夢を見なかった。
なんだったんだろう。