夢に似ている

 県立図書館のしかけ絵本展へ*1。児童図書の階の小部屋に絵本が置いてあり、じっさいに触ったりしかけを動かすことができます。こども用のちいさな椅子に座って、あれやこれや楽しんできました。
 今回の展示のいちばんの目玉は、チェコのヴォイチェフ・クバシュタの童話の絵本、十数冊。四十年前の本だけれど色鮮やかでいま見てもかわいらしい。なにより表紙から動くしかけが施されているのが、これからしかけ絵本を読む! というわくわくを、否が応でも高めます。『ねむりひめ』の眠りの魔法がとかれる場面は、ディズニーふうの、寝台に横たわるお姫さま、ではなくて、窓辺にもたれかかるように眠るお姫さまに、窓の外からそれをまぶしそうに見つめる王子さま。紙の取っ手を動かすと王子さまが窓越しに身を乗り出して唇を寄せる、というしかけ。なんてしずかですてきなキスシーン!
 ペーパードールつきでドールハウスのように遊ぶことができる『ピーター・ラビット』のおおきなおおきな絵本や、がまくんがちょっとセクスィな『がまくんとかえるくん』、デコパージュみたいな『野原のむこうの物語』と、おなじみの絵本も、飛び出したりしかけがつくと、そこをそうするか! と意外性があっておもしろいです。『シンデレラ』の絵本では、お城からの使者のガラスの靴を持つ腕が動いて、下働き姿のシンデレラの片足に履かせるしかけになっていました。それを見た瞬間に思い出したけれど、私がはるか昔こどものころに持っていた絵本でも、やはりそこはしかけになっていたので、しかけ絵本の作家さんにとっては、ここぞ、という動かしどころなんでしょうね。
 さて、私がいちばん心惹かれたのはフィリィダ・ギリの絵の『ふしぎなくるみ割り人形』でした。クリスマスのプレゼントの包みをひとつずつ開けることができて、まるでアドヴェントカレンダーみたい。くるみ割り人形の呪いがとけたあと、雪木立の向こう、さらに門の向こうの二重のしかけに隠された宮殿へ橇で行くと、フラメンコや、コサックや、中国の踊り。魔法使いみたいにあやしくて、ふしぎな風貌のドロッセルマイヤーさんも雰囲気満点。そういえば『くるみ割り人形』はさいご、クリスマスツリーのもとでクララが夢から覚めるところで終わるように記憶していますが、しかけ絵本も夢に似ている気がします。いろんなものが飛び出して、にぎやかでおもしろくて、でもぱたんと本を閉じると、澄ました顔で「いつも」が戻って来てしまうところとか。