ずぼらテクニック

 着付けのおけいこは、ゆかたのフェーズを終えて、長襦袢のうえに着るおきものの段階に入りました。まずはウールか紬の、硬い手触りの普段着、というのが今回のテーマ。
 そんなわけで実家に帰って桐箪笥をひっくり返したのですが、心当てにしていた母や祖母のウールは、袖幅も袖丈もちいさくて、私の長襦袢では袖がだぶついてしまいそうでした。大誤算!
 自分のウールは持っていないし、紬といったら、まだしつけ糸をとっていない結城紬と、あとはお気に入りの大島紬があるけれど、大島は硬くないもんね、紬というなまえだけれど紬糸の生地じゃないし……、と迷った結果、結城のしつけ糸をとって持っていくことに。
「こんな真新しいおきもの、練習で着るにはもったいない」とは、実家で祖母に、お教室で先生に、異口同音にいわれたけれど、いいのです、このおけいこのあいだに、箪笥に眠るまだ袖を通していないおきものの、すべてのしつけ糸を断ち切るくらいの勢いでとりかかるのです!
 この結城紬がずっと箪笥の肥やしになっていたのは「私が着てもいいような地味で老けた色!」という母や祖母のことばが気にかかっていたからでしたが、実際に着てしまえば、それはそれでおとなっぽくて、すてきな感じ。袷の季節になったら、着ておでかけしてみようっと。
 きょう教わったなかで最も感動したポイントは、「腰紐をてきとうに結んだらずいぶん下のほうで、おはしょりが長くなっちゃった、というときに伊達締めでリカバーする方法」でした。それは、いままでどの着付けの本でも読んだことがない気がするわ……。そして、たしかにその時点で腰紐を解いてやりなおすなんてめんどうくさすぎる。プレタやお下がりの、着丈の合わないおきものをお直しせずに着るときも有効かも。
 このずぼらな、もとい生活感に溢れた感じ、おきものってかつてはほんとうに普段着だったのねという実感が湧いてきます。
(これを超えるずぼらテクニックは、学生時代に憶えた「襠のある袴を脱がすにお手洗いで用を足す方法」だけ)