恋をさがすように

 物件探し。
 5軒を見てまわるのに、6時間を費やして、不動産屋さんの車でぐるぐるまわっていたら、ひょんなところに雰囲気のいいアンティークとオーダーの家具屋さんを見つけました。物件が決まった暁には、あそこで記念に家具を買おうねえ、という話に。
 ああ、そういうのって、すっごく、私を燃やすわ。すこし未来の、ちょっとすてきな生活、そのためのアイテム、というのが私にとっては最大の燃料みたいです。
 しかし、きょう見た物件の中には、これ! という決め手はなくて、さいごのほうは私も主人も不動産屋さんもぐったりしていたのだけれど、ぐったりするなかで天啓のように閃いたのは、住まい探しって恋人を探すのに似ているということ。
 この世界のどこかには理想そのものの、完璧なひとがいるはずなのに、目の前にあらわれなかったり、自分の力では手に入らなかったり。
 好条件ですよ、といくら他人にいわれても、なんだかピンとこなかったり。
「とってもすてき!」って思うと、もう他人のものだったり。
 大きな額のお買い物と思うと勝手がわからないけれど、そう考えるとわかりやすいというか、判断しやすい気がしました。
「つまり、いまの駅近だけど間取りが変な物件は『大手企業に勤めているけれど体型が気に入らないTさん』って思えばいいのよ! 次に行きましょう、次!」
「絹子さん、具体的過ぎるんですけど……」と主人には咎められ、
「私はノーコメントで」と不動産屋さんには下を向かれました。
 えー。真理だと思ったんだけれどなあ。
 でも、そうすると私は第一印象で「これは、ないなあ……」と感じたところに、結局落ち着いてしまうのかしら。主人との出会いのときの記憶をひっぱり出してきて、そんなふうに思いました。