実家に帰る

「実家には帰らないの?」
 と、クリーニング屋さんのおばさんに訊かれて、えっ、さいきんはそんなダイナミックな夫婦喧嘩はしていませんが……と思ったら、そういう「実家に帰る」ではなくて、お盆の帰省のことだったらしい。
 私の実家は電車で7分、主人の実家も10分の場所にあるので、とくに泊りがけで帰るということはないです。というか主人が残業で遅くなる日などは、ばんばん実家に帰って上げ膳据え膳で夕ご飯を平らげてきています。
 で、帰省というのはテレビのなかで見る、Uターンラッシュくらいでしか意識しないものだったけれど、クリーニング屋さんが当たり前のように訊くんだから、このあたりも帰省するひとが多いのかあ、と気づいた次第でした。
 子どものころも、両親のそれぞれの実家が自動車で30分圏内だったので、そうしたものはありませんでした。新居はお互いの実家に近づいたので、ますます縁遠く。
 帰省って、いまの住まいと実家とのあいだに、どれくらいの距離があるとするものなんでしょうね。
 それにしても、帰省というのは、あこがれの響き。「いなかのおじいちゃん・おばあちゃんち」とか、いいわよねえ、行ってみたいわよねえ。「ぼくのなつやすみ」のような世界って、いちど体験してみたい。ゲームをプレイしたことないけど。
 いままで経験したなかで、もっとも「いなか」っぽい場所というと、母方の祖母の実家がそうで、家のまえの小川で西瓜を冷やしたり、自然と隣り合わせだったけれど、裏山には熊が出るというので立ち入り禁止を厳しく言い渡されるサバイヴなところでした。「ぼくなつ」には、せいぜいカブトムシやクワガタくらいで、熊は出ないんではないかなあ。たぶん。プレイしたことないけど。
 子育てするなら実家と行き来しやすいほうがいいと考えて近距離に家を買ってしまったけれど、「いなか」をつくるというのは見落としていた観点だったなあと、いまさら思い至りました。将来子どもに、夏休みの宿題の絵日記のネタがないって恨まれたらどうしよう。