私を野球につれてって

 2004年、日本プロ野球史上初のストの経緯を選手サイドから再現したドラマがNHKで放映されていて、なんとはなしに観たのですが、これがおもしろかったです。
 実在のプロ野球選手を、見たことあるようなないような俳優さんたちが演じていて、これがまた似ているような似ていないような……、もやもやすること甚だしい……。
 というのとは別に、選手たちって日本野球機構や球団の運営からは、ずいぶんとないがしろにされた立場だったのねということがわかり、興味深かったです。プロ野球選手というと、成績の低迷や怪我のリスク、引退年齢が早かったりして不安定な代わり、ふつうのサラリーマンと比べると高給取り、というイメージを抱いていたのですが、「12球団あったのが1球団減ります。来年からは1リーグ制になるかもね」って、ふつうの企業(一部業種除く)じゃ考えられないような人員整理! 不安定さの桁が違いました。
 また、機構・球団側の、当初の取り付く島の無さ加減が、このドラマのなかでは、恐ろしいくらい。選手がいなければ興行にならないのにね。
 労使交渉が決裂した際、各球団の選手会会長らがおのおのの球団の選手たちに連絡をとるのに、「まずはファームの選手からな!」というシーンなどは、ううむと唸ってしまいました。ふだんの華やかな印象からは程遠い、働くお父さんたちっていう感じ。
 ちなみに、記憶を洗えばその当時、偶然にも、スト明け第1戦の西武vs千葉の試合を西武ドームに観に行っていました。広い、風通しのいいところ(西武ドームは「場外ホームランの出るドーム球場」だからね)でビールを呑めればいいやという程度で赴いたのですが、あれは、楽しかったなあ。当日に席が隣り合っただけの見ず知らずのひとと肩を組んで、応援歌を歌って声をはりあげて(ネイティヴ埼玉県民は松崎しげるの歌うこの曲を聴いて育ちます)。そのようすがTVのニュースで映ったのもなつかしい。
 あのときいっしょに行った男の子たちも、お婿に行ったり、転職して実家に帰ったりと、いまではいろいろだけれど、ああいう楽しい思い出のために、ファンのために選手のために、プロ野球はあったほうがいいと心から思います。