物と思い出の妥協点
来月の引越しに向けて、わさわさと不要物の処分ちゅう。
去年結婚した際にも実家の本をだいぶ間引きしたのだけれど、そのとき判断しきれなかったぶんが「とりあえず、家を買うまで置いておいてね」と実家に本棚ひと棹ぶん残っていて、それもどうにかしないといけません。
あれから一年弱と経っていないけれど、やっと、なにが必要でなにがそうではないのか、最終処分が下せそうです。
詩集や歌集は、大のお気に入りのほかは、処分するまえにひと通り再読して、好きな一篇や一首を抜き書きしようと思って残しておいたのだけれど、表紙を見ても、その「一篇や一首」を思い出せなかったら、それは縁がない本だったということで、そのまま頁を開かずに処分してしまおう。
どんなに好きだった作家の作品でも、図書館にもあって、オンライン予約してすぐ順番がまわってくる本なら、やっぱり処分してしまおう。
なんだか所有欲が減ってしまったのは、どうも、その結婚時の処分のどさくさで、望月花梨の全既刊と谷川史子の『りぼん』時代の本を、うっかり手放してしまっていたことが判明したからです。
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あまりにもショックで、じゃあ、もう、ほかになにを持っていたって、なんにも持っていないのと同じだわ、と思ったのでした。われながらオール・オア・ナッシング。
でも私、このひとたちの漫画を初めて読んだときのことはよく憶えている。『りぼん』も『花とゆめ』も、それまで買ったことがなくてたまたま手にしたのに、『きみのことすきなんだ』(谷川史子の『りぼん』本誌初掲載作品)や『コナコナチョウチョウ』(望月花梨の初単行本の表題作)という、いまこのひとたちの略歴を書くなら必ずなまえが挙がるようなマイルストーン的な作品が載っていて、その当時はそんな知識はまったくなかったけれども、うわあこのひとの漫画ってほかの漫画家とはぜんぜん違う! ということだけは本能的にわかったのでした。
その思い出があるから、いいの。物より思い出なのっ。
……と、おセンチなことを考えて、本のなかの情報が必要というより、本にまつわるエピソードが大事だったのねーと気づいたわけです。
この作家さん好きだなあ、すてきだなあって思った気持ちを残しておきたくて処分できずにいたのなら、そりゃあ、全既刊の一冊も欠けさせたくなくて、本まみれだったのも道理。
それなら、好きだったなあ、すてきだったなあ、とたまに思い出すよすがとして、いちばんお気に入りの一、二冊を手許においておくらいで、充分なんではないかしら。
それが物と思い出の、いい妥協点なのではないかなあ。物ばかりだと住環境が貧しくなるし、思い出だけだと味気ない。
というふうに、あれこれ考えているので、作業はなかなか捗りません。