まるで“EAT ME”と書いてあるお菓子

 ここのところ、目にするもののたいていが段ボールか発泡スチロールか梱包用プチプチなので、もっとうつくしいものに触れなければ……、と突発的にメアリー・ブレア展に行ってきました。
 メアリー・ブレア展@東京都現代美術館(http://www.ntv.co.jp/mary/)。
 ディズニー映画にまつわるたくさんの作品を見て、連想したのは、米国のデコレーションケーキ。かわいくて甘い色とりどりで、でもちょっと体に毒そうな色もまざっていて、食べるのを躊躇するような。華やかで愛くるしく多幸感たっぷりなのに、ところどころ、あれ? あれ?? と思う箇所があって、それがお砂糖というよりチクロやサッカリンを思い起こさせました。このひとは、仕事をこなしつつ家庭を完璧に運営して、ってすこし強迫観念的に思っていたのではないかしら。だから印象的なのは、下働き姿で鏡を覗きこむシンデレラだとか、ネヴァーランドのほの暗い入り江に花が咲くように憩う人魚たちの、どこか影のある絵なのね。
 メアリー・ブレアは、「イッツ・ア・スモール・ワールド」のデザインも手がけたのだそうです。なるほど、私、子どものころから、あのアトラクションに乗ると、音が途切れたところ、ちょっとした暗がりからなにか化け物で出てきそうでこわいような印象をもっていた理由が、この展覧会ですこしわかった気がしました。
 かわいいけれど、すこし毒がある…って、まるで“EAT ME”と書いてあるお菓子みたいに、魅力と忌避感を同時に感じさせる。まあ、そういうの、私は大好物です。
 あともう一点、強く感じたのは、コンセプト・アートっておもしろい、ということです。絵本の挿絵ともポスターとも設定画とも違うのだけれど、そのどれでもあるような、おいしいとこどりの絵。それは登場人物の全身像だったり、舞台となる部屋のインテリアだったり、ストーリーのなかのワンシーンだったり。
 展示会の半ばから、もう、「帰りがけにどの絵柄のポストカードを買っていくか」の品定めのような目で展示物を見ていました。とりあえず上限10枚と定めたけれど、全140種類のなかから選び出すのは、むつかしかった! 「ベイビー・バレエ」の絵柄が見つからず買えなかったのが、そもそも商品化されていないのか、私が探したりなかったのかわからず、心残りです。
 かわいい絵柄の入場券を蒐集するのが趣味なので、入場券購入の混雑防止にオンラインチケットが推奨されていたんだけど、買わずに行ったのです。が、美術館で並んで買った当日券は、レシートよりすこし厚い感熱紙に、日付や展覧会名が印字されただけのものでした。がっかり。きっと前売り券はかわいかったんだろうけど。
 そのかわり、リーフレットがすてきでした。コラージュにうってつけ(というのが私の「すてき」の判断基準)、A5ノートのカヴァーがつくれそうなアリスの絵柄や、ちいさな図版がシンデレラほか10点ほど。去年はこの展覧会(id:moony:20081005)のリーフレットで手帖カヴァーをこしらえたけれど、そうねそろそろ新調する頃合ねと、組み合わせをあれやこれや、思案しているところです。