町を去ったあとに、少年や少女が

 「AQUIRAX UNO POSTERS 60's」宇野亜喜良60年代ポスター展*1を観に、ポスターハリスギャラリーへ。
 mixiで教えてもらったのが、最終日前日! で、慌てて渋谷へ駆けつけました。
 ギャラリーは、坂の途中に折れて入る小路のつきあたりの、古風なアパートメントの一室。
 宇野亜喜良の作品というと思い浮かぶのは、繊細な色鉛筆の絵。それこそ、身じろぎひとつ、息つぎひとつで描線の軌跡がかわってしまいそうな……という印象があったんだけど、展示されていた作品はシルクスクリーンの、版画らしいデザインが大半でした。インクの黒、それがいかにも60年代の、ポスターという媒体らしい雰囲気。町を去ったあとに、少年や少女がふっつり消えているような、ブラッドベリばりの移動式のサーカスって、こんなポスターを街角に貼っているんではないかしら。
 一点だけ、オフセット印刷の「天蓋つきベッド」のポスターがあって、これもすてきでした。シーツの海を思わせる白をバックに、淡い淡い色で少女の裸体と、ひとの舌のような蝸牛たち。
 興味深かったのは、寺山修司が自宅でひらいたサロンのおしらせの、ちいさなちいさなおしらせポスターでした。詩の朗読会や自作アニメーションの上映をしていたようです。寺山修司って、そういう、こぢんまりとした催しもしていたんですねえ。なんだか意外。住所や電話番号もばっちり載っていました。60年代って、時代ぜんたいが黒弥撤のようなイメージがあるけれど(たぶん、大幅に誤ったイメージ)、いまよりずいぶん牧歌的な時代でもあったのねえと思いました。