ずっと世紀末のままで

 つづけて、日本橋高島屋へ移動。『クリムト、シーレ ウィーン世紀末展』*1です。
 ウィーン世紀末とひとくくりにいうけれど、クリムトとシーレの印象は、対照的。シーレは19世紀というより、もうフロイト後の、20世紀の世界の絵のひとという感じだし、いっぽうで、クリムトは時間が止まっているような、このひとの19世紀はほんとうに20世紀につづいているのかなあ、ずっと世紀末のままで、永遠につづく夢を見ているんじゃないかしら……という作風だし。と思いつつ観にいきました。
 クリムトが、私はもうこっちの世界に行くかんね、と宣りあげるための作品のような、威圧的な『パラス・アテナ』も良かったけれど、「あの」クリムトの作風になるまえの、ごく初期の作品が何点かあって、これもおもしろかったです。寓話的、神話的なモチーフの絵ばかりで、ああ、これが長じてああなったわけね……、という感じ。
 のちの『接吻』を思わせるような『愛』という作品がすてきで、絵葉書を買いました。左右に金地が配されて、そこに掛け軸のような間合いの薔薇。
 しかし、いちばん印象的だったのは、じつは、フーゴー・シャルルモントによる『ハンス・マカルトのアトリエの静物』でした。暗い部屋に、帆船の模型や貝殻、東洋のものらしい彩色の壷、インコの剥製といったオブジェが並んでいて、退廃的かつ成金ぽい……。これこれ私のウィーン世紀末のイメージはこれなのよ! でも、この絵の絵葉書はありませんでした。ざんねん。
 ところで、入場券を購入して会場に入ろうとしたら、もぎりのおばさんが、まえのお客さんのチケットをちぎり損ねている場面に遭遇。恭しく、あらかじめきれいに切ってある入場券と交換していました。やっぱり入場券って蒐集の対象ってことなのかしらと思いました。
 日本橋高島屋の、古式ゆかしい百貨店のエレベーターは、世紀末と冠する展覧会にふさわしい気がしました(昇降機、って書いてルビをふるのね、きっと)。