ちょっとしょっぱい

 ヴァレンタインでしたねえ。
 年明けからこちら、七草粥だの恵方巻だのはちゃんとちゃんと準備してきたのに、ここへきてなにか気が抜けてしまいまして、ことしの手作りチョコレートは、ソシソン・オ・ショコラ。選んだ理由は「オーヴンを使わなくていいから」と「テンパリングが必要ないから」です。
 材料のナッツ類はオーヴンではなくフライパンで炒っちゃう。しかも無塩バターを買い忘れていたので、ふつうのバターを使っちゃう。チョコガナッシュに刻んだドライフルーツとナッツ類を混ぜて、ラップに包んだあと、手でソーセージ(ソシソン)の形に整えて、冷蔵庫へ。冷えた固まったそれの外側に粉砂糖をまぶしてスライスし、トリュフ用のラッピングボックスの中敷きを取り外して、チョコをつめて完成です。
 作った本人からすると、全体的に気の抜けた感と手を抜いた感のあふれる仕上がり。味見してみたけれど、やっぱり、ちょっとしょっぱい。
 しかし、主人に食べさせると「おいしいねえ! 手作りすごいねえ!」と、大感激していました。
 意外に、手がこんでみえるお菓子なのかしら。粉砂糖のほかにココアパウダーをまぶしたものも用意すると、かんたんで、でも豪華そうにみえて、いいかも……?
 いちねんまえのヴァレンタインはなにを作ったかなあ、と記憶を探ってみたのですが、二月十四日の直前に大掛かりな夫婦喧嘩をして、頭にきたので「ことしのヴァレンタインは中止になりました!!」と宣言し、チョコをあげず、プレゼントの、あとすこしで編みあがるというマフラーをぜんぶほどいたことを思い出しました。
 毛糸だまの山に戻っちゃったマフラーを見て、床に突っ伏して泣いていた主人がいたなあ、そういえば……。
 ことし、感激されたのは、そういういろいろが隠し味になっていたのかもしれません。
 なんだかちょっとかわいそうになってきたので、来年はせめて無塩バターを使ってあげようっと。憶えていたらの話だけれど。