かぎ針編みの王子さま

 ニットの貴公子・広瀬光治さんのトークショウに行ってきました。
 じつは、主人の祖母が編み物教室の先生で、広瀬先生だーい好き! なので、こんど会ったときに共通の話題のねたになればと思ったのです。
 おかまさん疑惑ネタや薄毛ネタ(リーブ21のCMに出ていたから、こちらは疑惑ではない)など体をはった話題で会場をあたためたのち、貴公子の半生と編み物とのつきあい、そして昨年度いちねんかけて金沢21世紀美術館で展開されていた長期展覧会(行きたかった!)のエピソードなど、とてもおもしろかったです。

  • こどものころ、編み物をしていても「男の子なのに」と制止されない家庭で育った
  • はじめてのセーターは高校生のとき、東北地方への修学旅行のために編んだ
  • 貴公子のさいしょの就職先は編み物関係ではなくて、水産会社。春闘等のスト(時代を感じることば)のときに編み物をしていたら、専門学校への通学を勧めてくれるひとが現れた
  • 編み物のコンクールに応募したら二位入賞で、賞品が編み物の通信教育だった
  • その通信教育の会社がヴォーグで、のちに転職することになる

 さて、ニットの貴公子といえばいまどき女性でも着ているひとがいないような、きらきらでふりふりでレーシーなニットの、70年代少女まんがの王子さまふうないでたちですが、きょうもライトを浴びてきらきら輝いていました。材料はイタリア製のスパンコールつきの毛糸で、ひと玉1900円くらいするそうです。
 国産にも似たような毛糸があるけれど、スパンコールがすこし貧弱。メーカーから提供を受けると自由に文句が言えなくなるので毛糸は自腹で購入する、というお話が、世間一般のイメージに反して、とても男らしかったです。
 会場には作品例も展示されていて、そのなかのひとつが、一見すると千鳥格子の布帛のテーラードジャケットなのに、じつはニット作品でした。身頃は白と黒の毛糸のアフガン編みで、パネルラインの各パーツをとじはぎではなく半返し縫いで繋ぎとめているという、編み物と洋裁の融合。
 個人的に、貴公子というと印象深いのは、ETVの番組「おしゃれ工房」の出演の際、アナウンサーに紹介されてアップでうつされているときに、「にっこり笑いながら小首をかしげる」という、アイドルみたいな所作をしているのを観たことでした。その仕草がなんだかとってもプロっぽくて、ニットの貴公子! 広告塔!! という雰囲気だったんだよねえ。その印象にたがわず、トークも、作品も、衣装も、プロフェッショナルのすばらしさでした。
 会場に来ていた聴衆は九割がたが女性でしたが、そのさらに二割くらいがお手製らしいニットをお召し。ニットの貴公子のトークショウには、それが第一級礼装なのね、きっと。