お父さんって

 主人のおともだちのお宅に、夫婦そろってお邪魔してきました。
 一歳九か月の長男くんは、とてもひとみしりっこ。さいしょ、私がベビーチェアのとなりの椅子に座ったら、全身で拒絶されてしまいました。その後、プラレールの車両と車両のジョイントをつなぐ役目(あれって、こどもでも簡単にはずれるのに、こどもの手でつなぐのは難しいんですねえ)をひたすらこなしたところ、どうにかこうにか警戒心を解いてもらえて、ミルクをかけたいちごをフォークでつぶす作業の、器を手で押さえるお手伝いをさせてもらえるくらいには、お近づきになれました。
 でもさいご「赤ちゃんを抱く練習をしてみる?」と抱かせてもらったら、人さらいにあったような形相で大泣きされてしまいました。
 そりゃあそうだろう、今日が初対面の人物と距離ゼロなんて、おとなだってこわいよねえ。
 あと「お母さんといっしょ」のこどもの目と注意を掴んで放さない力はおそろしいほどでした。あれは、何歳以下にしか感知できない電波を流しているのではないですか? こう、犬笛のように。
 おともだちくんは主人とは中学高校大学と同窓で、二十五、六歳で結婚したので、ちょっと若いお父さんです。マリオカートの対戦をしながら長男くんにかまってあげる姿が、お父さんというより、年齢のはなれたお兄ちゃんのようでした。結露したグラスを長男くんのほっぺにくっつけて泣かせて、「自分がされたら厭なことしないのっ」と奥さん(八歳年上)に叱られていたりしたので、ますますお父さんというよりお兄ちゃんっぽく。
 でもこのせりふ、いつかどこかで訊いたことあるなあと思ったら、遙か遠いむかし、まだ乳幼児の弟にちょっかいを出して泣かせて、父が母にいわれてたんだよねえ。お父さんって。男のひとって。そういうものなのかしら。