骨董市

 隣まちの神社の境内で月にいちど開かれる骨董市に、夫婦で行ってみることにしました。
 ……が。
「午前七時からやってるらしいよ! 早起きしようね!」
 と前夜から声をかけていたのにもかかわらず、『ウイイレ』だか『サカつく』だかを午前六時までプレイして就寝したという不届きものが若干一名ほどおりまして、当然、朝と名のつく時間帯には起きられず、実際に出かけたのはなんと午後二時! 市の終了時間の二時間まえ!! というありさまでした。
 その時間帯だと、駅から神社へ向かう際、大荷物を抱えてほくほく顔の人たちがやってくる方向に進めばまちがいがないので、迷子の心配いらず、という利点はありましたが。
 着いてみるとやっぱり撤収しているお店もいくつかあって、お客さんよりお店のひとが多いような印象でしたが、それでも境内にはずらりと露店が並んでいて、その様子に圧倒されてしまい、購買意欲が消し飛んでしまいました。約二百もの出店数だそうです。
 お目当ては古裂だったんだけど、アンティークきもの屋さんだけでも数十軒が出店していたので、「あと二時間でぜんぶを見てまわるのはむりだ……」と、早々に絶望してしまったというのも、理由ではある。
 それでお買いものはあきらめて、お店をあれこれ見てまわるだけにしたのですが、目にも楽しいものが多かったです。アンティークのピクニックバスケットや、むかしらしい、きりっとした硝子製品や、お人形の調度品や、なぞの実験道具。あとは骨董といえば定番の、書画や陶磁器、コインに切手、ミリタリーものなどなど。
 パチンパチンと硬質な音がするので、なんだろうと目をやると、売り物のクリスタルグラスの将棋セットで骨董商のおじさんたちが対局を始めていたり、系統的には『美しき天然』系の曲が突然ぷわぷわと流れてきたので振り返ってみると、これまた売り物の携帯式の蓄音器にレコードがかけられていたり、実演販売なのやら、おじさんたち暇つぶしなのやら境目があいまいな、フリーダムな雰囲気も魅力的でした。
 次回はぜひ心を強く持って、気押されずに古裂をゲットしたいものです。あと、早起きもしないとね。