本棚と相談ちゅう

 古本市で、またおもしろい掘り出し物を見つけてきました。お手製の上製本です。
 こちらのブログ(http://marginalia.jp/wp-trackback.php?p=944)にも写真入りで紹介されていますが、ごくふつうの文庫本に、厚紙にクロス地をはった表紙がつけられています。といっても高級感溢れる、というのとは違って、函に使われている紙の柄が、なんだかどこかでみたことがあるなあ、とよくよく見てみると地元の書店の紙袋だったり、どちらかというと生活感溢れるもの。
 こうした本が棚ひとつぶんほどもありました。函入りのために頁の焼けもないのだけれど、古い奥付ばかりだし、ラインナップが童話や詩歌集や歴史もの、ミステリと、共通するジャンルが見て取れたので、どうも、ひとりのひとの蔵書のよう。それがまとまった数、売り物になっているふうでした。どなたかが愛読書を手慰みに製本していたのかなあ。それを、ご本人が亡くなったのち、ご遺族が古書店に引き取ってもらったのかなあ、と妄想してみました。
 この、文庫本を手ずから上製本に製本しなおすというのは、よいアイデアだと思います。上製本にはいちど挑戦してみたいけれど、しかし綴じたいような紙の束が自分にはないなーと、手段が目的化したようなことをかねがね考えていた私にとっては、とくに、このうえない福音なのでした。文庫本がベースなら、失敗してもさほど金銭的に痛くないし、お気に入りの本も傷みを防げるし、同じ作家で違うレーベルの本の見た目を揃えられたり、いいことづくめ。お気に入り柄のプリント生地は裏打ちすればクロスにできます。それに、大量に集めてはみたものの、文庫本にはつけるのがなにやらはずかしかった蔵書票も、上製本なら躊躇いなくつけられるわ!
 調べてみると、自家製本のやり方を説明する書籍には、たいていこの「文庫本の手製本」が載っているし、創元社や美篶堂など、あちこちでワークショップが開かれているようです。
 というわけで、ファーストチャレンジをどの本にしようか、ただいま、本棚と相談ちゅうです。こういうちまちましたことに似あうのは、中勘助の『銀の匙』あたりかしら。河出文庫の『稲垣足穂コレクション』と新潮文庫版を買ってしまった『一千一秒物語』をお揃いにできればいいなとも思ったけれど、稲垣足穂にふさわしい紙やクロスの選定というのは、なかなか難問。どうやってもクラフト・エヴィング商會もどきになりそうです。