和装の楽しみはパーツの楽しみ

 きつけの教室には、この季節、浴衣のきつけだけを習える短期レッスンの生徒さんもやってきます。
 それであれやこれや、ひとさまの浴衣と帯の柄やコーディネイトを眺めさせてもらうのが楽しみなわけですが、きょう見かけたのには、吃驚した! メッシュの帯板の上辺にレースのフリルが生えてるの! 「帯板にフリルがついてるんですね!」と、その持ち主のお嬢さんに思わず話しかけたら、「ついていない帯板もあるんですか?」というお返事。えー、もしかして、いまは、フリルつきのほうが主流なのかしら。
 たしかに昨今、帯揚ではない、もゆもゆしたものが帯から覗いている浴衣姿を見かけるけれど、あれはそういう構造だったのかあ、と納得した次第です。帯の下にレース生地を巻いて、二重になっているのかと思っていたわよ。帯板についているならお腹周りも涼しいし、ちょうど体の正面から覗いて、楽ちんですね。
 と感心すると同時に、今週末、主人の友達主催でパートナー同伴の集まりがあって、それは浴衣着用推奨という話なのだけれど、その「浴衣」ってこういう「浴衣」のこと?? と、恐れ戦いたりしました。私、兵児帯を結んでゆくつもりなのに、浮いたらどうしよう。「なんだかパーツが足りないひと」と思われそう……。
 でもまあ和装の楽しみはパーツの楽しみだもんね。きょうの私自身のカリキュラムは七五三の七歳の女の子へ着せつける方法で、筥迫や末広、扱き帯と付属品がたくさんあって、着せつけるのがものすごく楽しかったので、そう思いました。
 ところで、子どもへの着せつけの練習は、子どものマネキンをモデルにやるのですが、背が低いので頭部がちょうど大人が手を動かすあたりにあって、かぶっているウィッグに触れて、すぐに落ちてしまうのでした。寒そうで可哀想だけれどウィッグをはずして着せつけてね、という先生の指示どおりにやったら、頭は丸坊主だけど睫毛ばしばしの子が紫のきものを着ているので、なんだか妙に艶やかというか、剃髪した小僧さんに振り袖を着せて女装させたみたいな、なんとも妖しい、倒錯的な見た目になってしまいました。あらららら……、だれかとこの妙さかげんを共有したい! でも、そんなふうに感じる私の感受性が怪しい、と思われる可能性が大かしらと、がまんして黙々と練習しました。