小ぢんまりとした店構えで

 夕がた、職場を出たところで主人より電話。体調が悪かったので早退して診察に行き、いますでに自宅の最寄り駅にいるというはなし。
「消化のいいものをゆっくり時間をかけて食べて、あったかくして寝なさいってドクターが」
 とのことだったので、最寄り駅で落ち合って、ちかくの中国茶のお店にて、中国粥と点心をすこし、ゆっくり時間をかけていただく。
 あたらしいメニューだという、あたたかい豆花がとてもおいしくて、追加でもうひとつ頼むか、迷うくらいだった。つめたい豆花にフルーツをのせた、南国らしいメニューとは趣が違って、あたたかい豆花に、きび砂糖をかけると粉雪のようにふわっと解けて、冬気分満点のデザート。
 ところでこのお店は台湾にまつわる本や雑誌でいっぱいで、店主の、台湾だーいすき、という好みがよくあらわれているのだけれど、お会計の際に「台湾へご旅行は?」と訊かれたので、「二回ほど」と答えたら、一回ならともかく、複数回だったので、われわれも同じジャンルだと判断されたみたい。店主の口から奔流のように台湾についてのトークが流れ出して(あんまりべんりすぎて、いちど羽田空港松山空港便をつかったら、もう成田‐桃園便はつかえない! というはなしとか)、なかなかおつりを渡してもらえず、うれしいんだけど、こちらにはいちおう病人がいるから、ちょっとこまった。
 おしゃべり好きなひとなのね、かと思えば、ちょっと違って、あるときはとりつくしまもない接客態度にべつのお客さんがいらりとしているところも目撃したことがあったので、ようするに、自分の好きなことを語るときだけは止まらなくなるタイプ。おんなじ職場にいたとしたら、ちょっと苦手かもしれない。でも、そういうひとだから、ひとりだけで切り盛りできる小ぢんまりとした店構えで、好きな国の食べ物や飲み物を扱ってもう何年も過ごしているのを見ると、それはそれでよかったねえ、というような気もする。