幻の肉

 雪の日。雪とは夜のうちに降り積もるもの、というイメージがあって、お昼をすぎてもまだ空から舞い落ちているのは、ずいぶんめずらしく感じました。
 めずらしいといえば、うるう年。四年ぶりの。デパ地下のお肉屋さんが「幻の肉(29)の日!」と煽っているのを見かけて気づいたのだけれど、二月って、29日がない年のほうが多いのか! お肉屋さんにとって、「お肉の日」がない月って、どういう位置づけなんだろう。ゆっくりできていいのか、それとも、はりあいがなくて、さびしいものなのかなあ。
 私のとってはこの二月は近年まれにみる絶不調なひと月だったけれど、よいこともそれなりにあって、ご近所のスペインバルで、宝石のなまえをもつ、夢のような味のする白ワインをいただいたし、くだものたっぷりのサングリアがおいしくて、そしてなぜかお客さんにおじいちゃんおばあちゃんが多い、ふしぎな雰囲気のビストロも見つけたりもしたのでした。中国茶房のあたたかい豆花もすてきだったし、舌にとってはたのしく、しあわせなひと月だったような気がします。