レディグレイと、『ライオンと魔女』
レディグレイの茶葉を買ってきて、お茶パックに、大さじ一と二分の一ずつ詰める作業の季節が、ことしもやってきました。この分量だと、一リットルのピッチャーにお水といっしょに入れてひと晩ねかせておけば、翌朝にはちょうどよい濃さになっているように思います。麦茶もおいしいけれど、アイスティーのすっきりとした味は暑い季節には格別だし、なによりレディグレイは、レモンやオレンジの皮や、濃いサファイア色の矢車菊の花びらが茶葉に混ざっている見た目の楽しさがあって、ちまちまとした作業も苦になりません。それに、シーズン到来と感じたら、お茶屋さんにわざわざ出かけなくても、ご近所のどんなスーパーでも手に入る、という点もたいせつ!
手許ではその作業をやりながら、目は、溜まってしまったHDDレコーダの、観ていない映像を消化して、空き容量を確保です。いつだかディズニーチャンネルで放送された『ナルニア国物語』の、第一章。
- 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
- 発売日: 2008/05/21
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『ライオンと魔女』は、公開当時、きっと『ロード・オブ・ザ・リング』の二番煎じみたいな映画なんでしょとたかをくくって観なかったのだけれど、当時の自分をグーで殴りたい。いい映画でした。
何部作にも渡る原作つきの映画化作品って、原作を読んでいるひとにも、読んでいないひとにもうっすら不満がたまる、不幸なものという印象があったけれど、こと『ライオンと魔女』にかんしては、原作既読者にとっては、受け入れられる範囲内だったのではないかなあ。
原作のなかで、いちばん心に残ったシーン――ナルニアはルーシーの絵空ごとだと思っているピーターとスーザンのふたりと、一緒にナルニアを訪れたくせにルーシーは空想ごっこをしているのだとうそをつくエド、エドが口添えしてくれるという期待が砕かれて驚きと憤りと悲しみがないまぜの気持ちでいっぱいのルーシー、この場面がていねいに描かれていて感動しました。ルーシーを演じた子役のジョージー・ヘンリーちゃんの演技がすばらしいのよね。
このルーシーと、ナルニアに住む半人半獣のフォーンのタムナスさんのコンビがすてきでした。白い魔女にルーシーを引き渡そうとしていたタムナスさんが、ルーシーのひとがらに触れ、そんなことするべきではない! と翻意するシーンでの、タムナスさん役のジェームズ・マカヴォイもとてもよかったです。物語のおわり、戴冠式で目配せしあいっこするふたりの、かわいらしさときたら!
そのあと、アスランについて語るタムナスさんのセリフがすんごいかっこいいと思ったら、これは原作ではビーバーさんが語っていたセリフなのでした。でも、ナルニアでルーシーが暮したあいだ、ふたりはよい親友どうしだったろうなあと想像させる、すてきな場面でした。ルーシーたちがナルニアを去ることになるきっかけは、タムナスさんによってもたらされるけれど、このタムナスさんだったら、ルーシーたちがいなくなった当初はおろおろしたのち、ああ、あき・へやの国のいしょだんすの町へ戻ってしまったのか……、としずかに納得していそう。
……と、観終えたあと、原作をひっくり返させて、あれやこれや想像を巡らせる力を持つ映画が、出来が悪いはずないじゃないかー。良作に決まっています。それにしてもルーシーとタムナスさんがかわいすぎて、レコーダから消せない、というあらたな問題が発生してしまいました。どうしよう。