ロシアとパリと、なぞの合流

 五月は、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの季節。テーマは「サクル・リュス」のことし、二年ぶりに参戦です。
 小花模様のワンピースに、リブのレギンス、そして雨脚が強くなることを警戒してハンターのレインブーツを装着したら、どう見ても、これから農作業に行くひとの見た目になりました。レインブーツのゴム長ぶりもあれだけど、小花模様ワンピがあまりにも野良仕事のおばちゃんのうわっぱりだった……。でも会場に行ったら、「見た目農作業」のひとが私以外にもたくさんいたのでよいのだ。
 お天気が悪いので屋内会場はものすごい混雑。そんななか小学生ビッグバンドのコンサートを鑑賞しました。ゆっくりしたテンポの曲だと、あら……という感じだったけれど、いかにもビッグバンドっぽい、スウィングの曲になったとたん、しゃきっとして、おお! と感心しました。
 そしてなんとここで、元上司と遭遇。そうだよね、好きなひとは来ているよね、おまつりみたいなものなんだもの……。ゆだんしきってすっぴんだったので、たいへんうろたえました。
 きょう最大のお目当ては、講演会。講師が鹿島茂! 私、このひとの著作のファンで、いちど生で拝見してみたかったのです。講演内容はバレエ・リュスと、それを題材に絵を描いたジョルジュ・バルビエ、鹿島茂のバルビエ・コレクションを展示している練馬区立美術館での展覧会のおはなし。
「一九〇九年の五月、ニジンスキーがパリの舞台でジャンプした瞬間に、ニ十世紀は始まった」というのが、もっとも印象にのこったことば。パリの二つ名は、「十九世紀の首都」だもの。時間軸と空間軸があやふやになるような、百年という時間の塊が一瞬に凝縮されるような心持ちがしました。
 ところで、ふだん読んでいる本の作者が、自分の目の前で動いて、話している、ってふしぎな感覚になります。これが、TV番組に出演しているのを観るのは、あんまりふしぎじゃないのだけれど。どうやら「TV」と「本」のむこうがわは、こちらの世界とよく似ているけれど、べつの次元にある、並行世界のようなもので、こちらとあちらのふたつの世界を繋ぐのがTVや本といった媒体だと捉えているようです。
 講演会のあとは、主人と合流。主人は今夜、新宿にて、お友達と飲み会の予定なのに、なんでか、有楽町に来たの。なんでか、って私がゆうべうっかり「あしたは講演会のあと、銀ブラするつもり」ともらしたのがいけないんだけど。「銀ブラ」ってようするに「ひとりでブラブラ出歩かせろ」の意味の呪文じゃないかしら男性に対しては(ふつうのだんなさんには、そうじゃないですかそうじゃないですか?)。しかし意図が通じず、「ぼくもいく!」ということになったのです。
 伊東屋にて「ぼく、これをほしいんだけど! 会社のデスクで使いたいんだけど!!」と主人がはしゃいで指さしたのが、なにか書斎っぽい、本革のペントレーつきデスクマットで、こういうものはお給料に役職手当がついてからほしがるように、とその場で指導。ヒラ社員は緑色の塩化ビニールのアレをアスクルに発注していればいいんだよ!
 その後、最上階のティーラウンジでお茶をして、解散になりました。いやほんと、なんのための合流だったんだろう。