ホワイト・ディと遺伝のはなし

 妊婦健診の日です。
 通っているクリニックは健診のたび4Dエコーをばんばんプリントしてくれるんだけど、いつもいつもタイミングが悪いのか、バックショットだったり、腕で顔を隠していたりで、はっきりとご尊顔を拝したことがないのです。
 しかしきょうは、ドクターが、
「はっきりお顔が見えますねー」
 おおっ、とモニターに注目。すると、
 あれっ?
 なんだか見覚えがある顔。
 私、こんな顔のひとを平日毎朝6時半に起こしています!
 そして6時45分に「こんだけ声をかけても起きないなら、もう起こさないからね!」と宣言するとやっと起きてくるのがこの顔です!!
 ……胎児、主人にそっくりだった。
 遺伝ってすごい。
 エコー技術ってすごい。
 そして、さかのぼること四ヶ月まえ、はじめて4Dエコーで見たとき、まだ腕も脚もわからない物体だったので、
「このチキンナゲットみたいなのが、赤ちゃんですか?」
 とドクターに訊ねたところ、
「このチキンナゲットみたいなのが、赤ちゃんです」
 と重々しく頷かれ、
(チキンナゲット似、という部分は否定しないのね……)
 と、みょうに感心したのを思い出したのでした。
 チキンナゲットから人へ。
 思えば遠くへ来たもんだー。
 しかし同時に、主人似ということはかんぺき和風顔で、野望の「ブリブリのエプロンドレス」が似合わない! ということが判明し、だいぶしょんぼりでした。エプロンより、被布が似合うタイプだわ……。

初節句祝着:ピンク被布スタンド付

初節句祝着:ピンク被布スタンド付

 主人からの、ホワイト・デイの贈り物は、ハーブティーの詰め合わせでした。
デカフェがまずすぎる。アルコールを飲めないのは我慢できるけどデカフェがまずくてカフェインを断てない」
 と私がぶつくさ零していたのをきいていたので、なんだか、有名なハーブティーのお店まで行ったのだそうです。
 他人事みたいに書くけど。こういうことにかんしては、うちの主人はまめだなあ。
「それでね、マタニティ向けの茶葉を品定めしていたら店員さんに、
『ご懐妊ですか?』
 って訊かれたの。だから
『ぼくが妊娠してるんじゃないんですけどね』
 って答えたの」
 おもしろいこと言ったった! というふうな顔で主人がそう報告するので、もう、ほんとにほんとにごめんなさい店員さん……、という気持ちになりました。
 だってぜんぜんつまんないよそれ。
 内心「けっ」と思っていたであろう店員さんのおすすめのハーブティーは、しかし、とてもおいしかったです。
 赤ちゃんには、主人のこのまめなところが遺伝するといいなあ。つまんないところは受け継がなくていいけど……。