このとき体内にぶわっと湧いて

 娘とともに退院。里帰りさきの実家へと戻ってきました。
 実家での娘の居場所としては、まず日中用には居間にハイローチェアを、そして就寝時用には私の自室のベッドに置くべく、こういうベッドインベッドを用意したのだけれど、

 ここに寝かせていっしょにお昼寝をして、ふと目覚めるとベッドサイドに佇むひとかげが。ぎゃあああと驚いたら、それは声もなくにまにまと笑いながら赤ちゃんを見下ろす、実母でした。
 薄暗い部屋で、カオナシみたいな真似はやめていただきたい!! と抗議するもそれについてはまったく頓着されず、
「『孫はかわいい』っていうけど、ほんとね〜」
 ……「孫は」って、「孫《は》」って。孫よりさらに近しい直系血族としては、なかなかに微妙な気持ちになるコメントを残して去って行きました。
 この、娘から見てのババのほかに、実家にはひいババとオバもおりまして、日中はいれかわりたちかわりお世話をするので、ハハとしての私は授乳時くらいしか出る幕がありません。1:4看護。手厚いわ。
 でも夜だけはハハひとりで対応。
 と、ここへきて、入院ちゅうはおしめが汚れたときとお腹が空いたときくらいしか泣かなかった娘が、どちらの問題もクリアしているはずなのに、寝かせようとすると泣いて泣いて泣きやまず。ひぇーいどうしたらいいの……と娘を抱きながらこまっていたところ、すかさずババが現れて、
「お風呂上がりだからほかほかしていて、防水シーツが蒸れて、いやなんじゃない?」
 ベッドインベッドの防水シーツを取り除くと、やっと寝付いてくれました。
 そうか、赤ちゃんって、蒸れて暑くても、泣くことしかできないのか……。
 そういえば以前、妊娠出産で仕事を辞めることを上司に伝えたら、はなむけのことばとして、
「覚悟しておいたほうがいいわよ。赤ちゃんって、自分じゃなんにもできないわよ!」
 といわれて、そんな、わかりきったことをいわれましても……、とすこし困惑したのだけれど、いやいや、私はわかっちゃいなかった。覚悟できていなかった。赤ちゃんって、こんなにも、母胎の外で生活するチューニングができていない生き物だなんて。
 でも、ひんこらひんこら泣きながら全身で私にしがみつく娘を見たら、なにこの、私に頼らないと生きていけないっていう感じ!(じっさいに問題を解決したのはババだけど) 私がついてなくちゃだめなんだ、という感じ!! 世にいう「だめんず」ってきっとこういう感情をだめんずウォーカーの心に湧き起こすんだわ! ……と思ったのでした。
 喩えはいろいろアレだけど、このとき体内にぶわっと湧いてきた気持ちを、忘れないようにしたいものです。