初節句の顛末

 とてつもない思い違いをしていたことに、いまさら気付いてしまった。
 おひなまつりは桃の節句の三月三日というけれど、あれ、旧暦ならいざしらず、三月三日そのものは、飾りつけに関しては、「当日」というより「最終日」じゃんね!
 三月って大手を振るっておひなさまを飾っていられるのは最初の一割だけなの。
 つまり戦いは二月からすでにはじまっているんだよ!!
 な、なんだってー!!!
 ……と、あまりの衝撃に、おかしなテンションになりました。
 どうしてそんなことをこの期に及んで気づかずにいたのかというと、私自身のひな人形は、七段飾りを飾りつけるのをめんどくさがった実母のために、年齢ヒト桁のころの四、五回しか、まともに飾ってもらったことがないのです。
(だから私、自分のおひなさまの十二単の色が思い出せない)
 というわけで、あわてて娘のおひなさまの飾りつけ。しかし、先月末に届いてそのままにしていた桐の箱を開けたところ、なんと中身が購入時に選んだものと一部異なっていて、われながら鬼のような形相で購入店に電話するはめに。
「葡萄色の漆塗りの屏風に映えるように、お人形の装束の色は白で、柄は屏風に描かれているのと同じ吉祥文様にお花の刺繍で」と、調度やら装束の色柄やら、専門店でこまごま選んだのに、三人官女だけ、なぜかピンクの鹿の子絞り。色も柄も技法も違う……。
 さいわい、お店ではすぐ確認がとれて、正しいお品の納品に若旦那がすっとんできたのだけれど、それを待つあいだ、荒れに荒れました。おひなさまって縁起物なのに! 厄除け品物なのに! 取り違えなんて縁起悪いわ! どうしてくれよう!! とプリプリしていたけれど、玄関にあらわれた若旦那が、お人形の箱のほかに菓子折り(「宮内庁御用達」の銘入り)を持参しているのを見て、
「許してもいいかも……」
 とトーンダウンし、ぶじ交換が終わって見送ったのち、菓子折りの中身を食べてみたらおいしかったので、
「……許そう!」
 と水に流すことにしました。
 菓子折りすごいな。威力が。
 いろいろと学ぶ点の多かった、親として初めてのぞむお節句でした。「届いたらすぐ確認」、「飾るのは二月から」、「人生で、いざというときの菓子折り」。教訓は以上三点です。
 精神的にものすんごく疲弊したので、来年はもうちょっと心安らかに迎えたいものだなあ。