コメディエンヌへの道

 娘との入浴タイムでは、「肩までお湯につかって、10数えてから湯船をあがる」というルーティンがあります。いつもは、すなおに10まで湯船で腰を落として、肩までつかっているのですが、
「数えている途中で、立ちあがっちゃう」
 という芸当? を、娘が繰り出してきました。ふたたび1から数を数えなおし始めると、いったんは腰を落とすけれど、3や4まで数えた時点で、にやにやしながら立ちあがる……というパターンを数回繰り返したので、もう、あきらかに受け狙い。
 1歳児でも笑いをとりにくるのだなあー。本人が思っているだろうほどには、おもしろくないんだけど。いやしかし、1歳児って数がわかるの? どれくらいの数までわかるの? と疑問に思いつつ、あらためて、いーち、にーい、と数えはじめたところ、さーん、しーい、でもまだ立ち上がらず、ごーお、ろーく、あたりで、
「あれ、数えるのってまだまだ続くっけ? それともそろそろ終わるっけ? 終わっちゃうまで立ちあがらないでいると笑いを逃しちゃうから避けたいんだけど、でもできるだけひっぱりたいし」
 とでもいいたげな、混乱と困惑と焦燥の表情が娘の顔に浮かび、しーち、で、たまらず、といったふうに立ちあがったので、まあ、それくらいが上限のようです。
 もういちど数えなおしたら、こんどは10までおとなしくつかっていました。本人も思うところあったのか、それともなにか「潮」を感じとったのか。お母さんとしては、焦っているときの表情がいちばんうけたんだけどなあ。コメディエンヌへの道ってけわしいね。